東芝事件 過失相殺の判例

 平成26年月の最高裁判決で「東芝事件」があります。最高裁の判例であり重要です。

 

 東芝の社員であった原告は休職期間満了で解雇されましたが、そもそもうつ病は過重労働に起因するものであったと主張し、賠償請求を会社側に行っていました。しかし、原告は、会社側にうつ病であることを告知していませんでした。そのために、会社側と社員側のあいだで責任割合がどれくらいなのかが争われました。

 

 過重労働の要因としてはたとえば以下のものがあったということです。

・過剰な残業

・はじめてのリーダー

・期限の短縮。厳しい督促。

・助言や援助がない。

・更に仕事を上乗せした。

 

 以上のような環境のもとで平成13年3月に頭痛、めまい、不眠傾向を申告しました。しかし、就労制限はしませんでした。

 平成13年4月に精神科診療所に通院を開始しました。エチゾラム、スルピリドを処方されていました(軽い内服薬です)。精神科受診については会社側に告知しませんでした。

 平成13年5月に1周間の休暇をとったあと、業務軽減を求めることを申し出ましたが会社側は対応しませんでした。

 平成13年6月に頭痛を再び申告しましたが、会社側は対応しませんでした。

 平成13年8月に休職を開始しました。その後、休職期間満了にて退職になりました。

 

 高等裁判所の判決では、過失相殺により2割減額でした。

 最高裁判所判決では以下の様な概要です。

 ・疾病の情報はプライバシーの情報であり、人事に影響する事柄である。メンタル不調は、一般的に告知しがたい性質があると認定する。会社側は社員本人からの積極的な情報の申告が期待しがたいことを前提とする上で、必要に応じて、その業務を軽減するなどの措置を講じる必要があった。当該社員は頭痛、めまい、不眠傾向といった兆候を会社側に伝えて、メンタル不調のために一時休んでいたうえに、軽減業務を申し出ていたこともあり、会社側はこのメンタル不調を認識しえたし、その後の悪化を回避することも可能であった。 過失相殺は相当ではなく、請求額の満額の賠償を命じる。

 


 このケースでは社員は会社側に頭痛は申告していましたし、一時やすんでもいましたし、軽減業務を申し出てもいました。最高裁判決では、会社側は不調を認識しうるし、回避することも可能であったとしています。社員はうつ病であることを申告していませんでしたが、少なくともメンタル不調の端緒を申告していましたことになります。これが争われたポイントでした。最高裁判決では、減額を認めませんでした。

 この事例では、会社側がメンタル不調の端緒を知れば、それを察することとしています。つまり会社側により厳格な安全配慮を求める判例となりました。