メンタル不全の気付きと裁判

 最近の傾向として注意しなければならないのは、社員の状態について会社側にある程度の情報しか伝わっていない場合です。社員の健康や疾病に関する情報は個人情報に属するために、会社側には十分な情報が伝わらない場合が少なくありません。ですから、会社側としては、社員を見た目で判断して、「このくらいなら大丈夫だろう」と推察することがあります。実際メンタル不全の状態は、見た目ではわかりづらいところがあり、会社内での社員が一見どこも悪いところがないように見えなくてもかなり不調である場合も稀ではありません。このような場合に、ある程度社員の疾病のことを知っていながらも、見た目の判断に基づいて、講じるべき配慮をしておらず一方的なゴリ押しのような形になって、後で状態が著しく悪化したときには、問題にされる場合があります。つまり、会社側が言っていど知っていたにも関わらず憶測で判断したとみなされるのです。

  裁判では、社員の疾病の状態が正確には伝わってないからという理由では、責任がないということにはならず、過失相殺はあるものの、だんだん会社側に厳しくなる傾向があります。これはメンタル不全は、社員にとっては会社側には本来伝えがたい情報であるから会社側もそのことを勘案しなければならないという前提があるからだとされています。つまり、会社側には「メンタル不全への気付き」が求められています。

 

 会社側と就労者側の信頼関係が著しく悪い時には、こういったリスクは高くなります。