安全配慮義務と健康配慮義務

 労働契約法第5条に「安全配慮義務」が掲げられています。例えば物理的な安全確保としてヘルメット着用の義務を課すなどです。また職業病の防止の義務もあります。

 最近の傾向としては、第5条に関する厚生労働省の通達において、安全配慮は健康配慮を含むと解釈するとされることにもとづいて、健康確保を企業が努めるように求めています。

 健康配慮とは、心身の健康を損なうことがないように配慮するように、ということであり、安全配慮よりより幅広い義務を求めています。

 健康配慮は、幅が広く、これさえやっていれば大丈夫というものではありません。健康配慮には一般的な定形がありません。個々のケースに応じて、それぞれの環境に応じて行うものです。

 

 過去の判例からみると、「健康配慮義務」のポイントは、たとえば、次の2点が重なった場合に、「安全配慮義務違反」と認定されたようです。

1.精神状態の悪化を認識していたのに漫然とした認識しかしていなかった。

2.適切な措置を講じなかった。

 

あるいはこれは次のように3点が重なると一般化されます。

 

1.予測可能な損害。

2.回避する手段があった。

3.それを行わなかった。

 

  この健康配慮の考え方は、平成12年の「電通事件」とそれ以降の裁判の事例を通じてできた考え方です。「電通事件」とは産業精神保健の世界では歴史的ともいえる出来事でした。今でも常識のようにしょっちゅう出てくる用語です。別途にご説明します。この電通事件を通じて、安全配慮義務に関する企業の法的責任の範囲が広がりました。また、それを厚労省が追認するとともに、さらに推進する方向に動いています。